2011年9月21日水曜日
ヤマボウシがここにも
トチノキに興味を持ったのがきっかけで、木の名前を調べ始めた.ずいぶん前に買って「積んどく書籍」になっていた「落葉図鑑」が活躍しはじめた.南三陸町へ向かって三陸道を往復し始めた頃だから 6 月半ば頃のこと.調査用の公用車であるダットサントラックの助手席で、高速道路の脇を埋める緑の木々を目で追って楽しんでいた.なかにひと際に目立つ不思議な木があった.適度に高木なのだけれど、樹形としてはなんだかてっぺんの方が平たくて、その平らかに空に開けたところに、まるで白いハンカチをまき散らしたように見えるのだ.緑のこんもりとした木の平らなてっぺんが、遠目には雪をかぶったように白く見える.それが道路際から見渡せる山のあちらこちらにポツンポツンと見えたので、とても気になった.でも、周りの人々は海の研究者.尋ねてみても正体は不明だった.たしか、南三陸町まで 5 往復もした頃のこと.私が復路のダットサンを運転して調査から戻って来て、農学部正門をくぐろうとした時に、自動車用ゲートのバーが上がるのを目で追っていて、ひょいと上を見て驚いた.なんと、あの白いハンカチを頭にまとった大きな木が、守衛所のすぐ近くに 1 本見えたのだ.調査用具を車から降ろし、ダットサンを所定の位置に戻し、さらに事務関係の諸手続きを終えたあと、すぐに木のところに取って返した.そして、目当ての木から、虫食いのない中くらいの大きさの葉を そっと1 枚頂いた.葉の側脈はみんなぐるっと葉縁に平行な感じに内側を巡って先端方向に向けて集まっていた.葉の外形は丸みを帯びて小振りだが、末端だけはキュッと尖って、なんだか見分けが容易そうに思えた.図鑑内をパラパラと探索し始めて間もなく、樹種が判明した.「ヤマボウシ」だった.「あれ、どこかで聞いた名前だな」と思って、しばらく経って思い出した.女房が一昨年の秋、将来シンボルツリーになるようにと家の前に植えた木だった.ひょろっとして、パラパラと枝を天に向けた若木は、あの山々の木々とは同じものに見えなかった.でも、帰宅して玄関脇の木を見上げてみると、なんとここにも白い花が、まだ疎らだけれども咲いていた.
登録:
コメントの投稿 (Atom)
閲覧数ベスト5
-
東京と熱海の間を新幹線こだま号で頻繁に往復するようになっ て、気になるものがいろいろと見えてきた.ここのところどうも気になって仕方なかったのが座席の肩の部分に飛び出しているキリンの角のような突起だ.乗る時によって、有ったり無かったりする(右の写真がツノあり、左の写真がツノなし...
-
ナマコの不思議な食事風景を見た.自宅の玄関に、いろいろな生き物を入れては眺めている小型の水槽があって、今はその中に大きさ 20 cm くらいのマナマコが入っている.食用に貰ったのだが、すぐには食べなかったので水槽に入れたまま、ペットになってしまったものだ.眺めていると、赤みを帯...
-
東京海洋大学で開催された国際甲殻類学会の東京大会はたいそうな熱気に包まれていた.世界各国から集まった研究者たちが其処此処で固まりあって話し合う姿が見られ,私たちもそんな輪の中に入って楽しい時を過ごした.研究材料を同じくするいわば同好の士が集うと話も尽きない.関連分野の研究のレベ...
-
図鑑に写真が掲載されているせいか、 ワレカラモドキは ダイバーさん たちによる認知度がけっこ う高い種類である. ワレカラの仲間とし ては 3 cm を超えるサイズのものも あって大きめだし、 シロガヤやアカ ガ ヤな ど大きめのヒドロ虫の群 体の茂みに 隠れているので、比較...
-
『われから絵本』が完成し、ついに世に出始めた. 『ワレカラ』は古今集や枕草子 にも名前が出てきて、むしろ古代の人々の間でよく知られた生き物だったようだが、残念ながら現代では知名度がかなり低い.そのワレカラを、絵本にしてみた. 絵は、 大学時代の同級生でもともとは両生類の研究者...
0 件のコメント:
コメントを投稿